目標13と関連づけて考えよう!

● 太平洋・島サミット閉幕 首脳宣言発表(2024年7月19日の記事より)

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今月のニュース記事

 

● 太平洋・島サミット閉幕 首脳宣言発表

 

 日本と太平洋の島しょ国・地域による「第10回太平洋・島サミット」が、首脳宣言と共同行動計画を発表して閉幕した。島しょ国が「存続にかかわる唯一最大の脅威」とする気候変動問題に関し、日本の支援強化を確認した。また、覇権主義的行動を強める中国を念頭に、首脳宣言に「武力や威圧による一方的な現状変更の試みへの反対」や、国際法に沿ったルールに基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を明記した。日本としては中国が影響力を拡大している現状を意識し、島しょ国との協力関係を再確認した形。共同行動計画には自衛隊の航空機や艦船の寄港を通じた防衛協力や、海上保安機関の交流強化を盛り込んだ。首脳宣言には、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出に関し「科学的根拠に基づくことの重要性で一致」と記載。今後も日本は透明性のある説明を続けるとした。

 

(ニュースダイジェスト 2024年7月19日より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 オセアニア地域の協力機構「太平洋諸島フォーラム(Pacific Islands Forum:PIF)」は、1971年の創設以来、大洋州諸国の首脳による対話での地域協力の場として発展してきた。最近では、気候変動に焦点が当てられるようになっており、特に地球温暖化と海面上昇の影響が、低い土地を持つ太平洋島嶼国にとって差し迫った危機となっている。

 

 IPCC第6次報告書によると、温暖化による今世紀末の海面上昇は0.5m~1mに達すると予想されている。いくつかの小島嶼諸国においては、その国土の少なくない部分が水没する可能性があることを示していると言える。そのため、海面上昇に耐えうる国土開発だけでなく、津波から命を守るなどの防災教育も重要となってくるだろう。

 

 これらの国々は、プラスチックごみの焼却能力やリサイクル技術などが貧弱なことにより、処理能力を超えつつあることで、生態系への深刻な影響が懸念されている。さらに、観光資源の減少も経済に打撃を与える要因となっている。

 

 このようなさまざまな問題に直面するPIFは2022年に「2050年戦略」を策定。(1)政治的リーダーシップと地域主義(2)人を中心とした開発(3)平和と安全保障(4)資源と経済開発(5)気候変動と災害(6)海洋と自然環境(7)技術と連結性、が戦略7分野となっている。日本はこれらに対して資金や人材の協力を行うことになっている。

 

 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 「太平洋諸島フォーラム(Pacific Islands Forum:PIF)」は、1971年に開催された南太平洋フォーラムが、その発展に伴い2000年に名称を変更したものです。加盟国は、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、サモアなど、16か国および2地域に及びます。その目的は、加盟国が直面する問題や課題に対処し、共通の目標を追求するために協力と連携を促進することです。2022年にPIFは「2050年戦略」を制定しました。これは、大きく7つのテーマがあります。(1)政治的リーダーシップと地域主義(2)人を中心とした開発(3)平和と安全保障(4)資源と経済開発(5)気候変動と災害(6)海洋と自然環境(7)技術と連結性、以上を戦略7分野として推進しています。わが国もこの取り組みに対して、資金や人材の援助を行うことになっています。特に最近では、気候変動に焦点が当てられるようになっています。では、気候変動と島嶼諸国との間にはどのような関係があるでしょうか。

 


 気温上昇は水温上昇を招きます。水温が上昇すると熱膨張により海水面が上昇します。ほかにも氷河の氷が融けるとその水が海に流れ込むことによって海水面が上昇します。このようにして、海水面が上昇することで、海抜が低い場所に平地が多い島国は、人が住む場所を奪われる危機に瀕しています。また、海洋は排出された二酸化炭素の約1/4を吸収する機能を持っていますが、排出される二酸化炭素量が増えているため、海洋に吸収される二酸化炭素が多くなっていて、これが海洋の酸性化を招いています。サンゴが死滅したり、貝類や甲殻類の発育が阻害されたりすることで、生態系に影響を及ぼしています。さらには、海水面が上昇することで美しい砂浜の景色が一変しています。この景色は貴重な観光資源なのですが、観光需要が低下することで、経済的に打撃を受けるようになってきています。海洋ごみの問題も深刻です。年間800万トンのプラスチックごみが海に流れこんでいると言われていますが、それらのごみが沿岸に漂着することで、環境の悪化や観光への影響、そしてなにより海の生物たちへ深刻な影響を与えてしまっているのです。

 

 SDGs13番「気候変動に具体的な対策を」では、世界が一体となって温室効果ガスの排出を抑える努力や、新技術の開発を展開していますが、目立った成果が上げられているかどうかは疑問が残ります。また、SDGs14番は「海の豊かさを守ろう」です。プラスチックをはじめとしたごみを出さない、リサイクルする、といった取り組みを急がなければなりません。

 

 これらの問題を速やかに解決に向かわせるためには、島嶼諸国だけでなく世界各国が一体となった強力な推進が求められるでしょう。

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.海水面が上昇するメカニズムはどのようになっているだろうか?

* 温暖化による海水温の上昇による熱膨張が主たる要因である。加えて、陸上の氷河が融けてその水が海に流れ込むことも海面上昇の要因の一つとなっている。海氷が融解することで海面が上昇すると思い込みがちであることに気をつけたい。


Q.プラスチックごみを減らすためにどのような取り組みが行われているだろうか?

* 代表的な取り組みである3R(リデュース・リユース・リサイクル)、それにリフューズ、リペアを加えた5Rの推進、生分解性プラスチックの開発、石灰石や紙による代替品の活用など、さまざまな取り組みや技術開発が行われている。これらは企業の努力も必要だが、私たち消費者一人ひとりの生活スタイルの変化と表裏一体となっていることに気づかせたい。

 

Q.島嶼諸国の問題とSDGs解決との関係をどのように考えればよいだろうか?

* SDGsにおける「南北問題」は、先進国が原因を作り途上国が影響を大きく受けることだと言われている。また、同様に「世代間問題」は、現代を生きる人がもたらした悪影響を将来世代に残してしまうことを言う。このようにSDGsは「正義」とは何かを考えるきっかけでもあると言える。

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。