● SDGs 達成度ランキング(2024年6月18日の記事より)
今月のニュース記事
● SDGs 達成度ランキング
国連と連携する国際研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が、各国のSDGs(持続可能な開発目標)の進み具合についての報告書を発表した。目標ごとの達成状況が4段階で評価されており、日本は昨年の21位から18位に順位を上げたが、環境負荷への対応などで深刻な課題が指摘された。これまで「達成済み」とされていた「質の高い教育」(目標4)が評価を1つ下げた。日本の数学の授業で日常生活に絡めた指導を受ける頻度が他国に比べて少ないという国際的な学習到達度調査(PISA)の結果が影響したと見られる。「ジェンダー平等」(目標5)、「責任ある消費と生産」(目標12)、「気候変動対策」(目標13)、「海の環境保全」(目標14)、「陸の環境保全」(目標15)が昨年に続いて最低評価だった。ランキング1位は4年連続でフィンランドだった。
(ニュースダイジェスト 2024年6月18日より)
指導のポイント
「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。
「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は2016年以降、すべての国連加盟国のSDGsに関するパフォーマンスを追跡し、ランキングによってその取り組みや進捗状況を報告書として毎年公開している。
報告書では、SDGs達成に向けた世界的な進捗の遅れ、停滞が指摘されている。ゴールのうち、2030年までに世界中で達成できる軌道に乗っているのはわずか16%の指標である。特に、SDGs2、11、14、15、16の5つのゴールは、2020年以降進捗が停滞していると指摘している。さらに、土地利用と食料に関連するゴールやターゲットについては、早急な改善が必要だと警告している。
また、国や地域によってSDGsの進捗状況が異なっている。欧州諸国は課題が見られるものの常時ランキングの上位に位置している。南アジアやBRICS諸国などは近年改善が見られる地域として紹介されている。
一方わが国は世界ランキングが18位と昨年の21位から順位を上げたものの、依然として十分に達成しているとは言い難い結果となった。この評価では、SDGsの17の目標ごとに「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階で評価しているが、わが国の結果は、唯一「達成済み」となったのはSDGs9番であった。「課題が残る」は1、3、4、6、16番の5つ、「重要な課題がある」は2、7、8、10、11、17番の6つ、「深刻な課題がある」は5、12、13、14、15番の5つという結果であった。
SDGsの期限である2030年まで残された時間は少ない。一人ひとりの努力だけではなく、経済や社会システム全体のアップデートが求められていると言えるだろう。
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
国際的な研究機関である「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は2016年以降、すべての国連加盟国のSDGsに関する取り組みを調査・評価して、各国をランキングしています。その報告書が6月に公開されました。わが国の結果は非常に厳しいと言わざるを得ませんが、報告書では、世界的にSDGs達成に向けた進捗が遅れているかもしくは停滞していると指摘しています。SDGsの17のゴールのうち、2030年までに世界中で達成できる軌道に乗っているのはわずか16%でした。特に、SDGs2番、11番、14番、15番、16番の5つのゴールは、2020年以降進捗が停滞しています。
また、報告書には国や地域によってSDGsの進捗状況が異なっていることも示されています。北欧をはじめとした欧州諸国は、課題が見られるものの、ずっと上位にランキングされています。南アジアやBRICS諸国などは近年改善が見られる地域として紹介されていますが、太平洋などの島国は、気候変動や不平等などに対して非常に大きな影響を受けているとも指摘されています。
日本の2024年のランキングは世界で18位と、昨年の21位から順位を上げました。アジアでは最高位です。しかし、依然として達成への道のりが険しいと言わざるを得ません。このランキングは、SDGsの17のゴールごとに「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階で評価されています。日本の結果は、「達成済み」が唯一SDGs9番のみでした。「課題が残る」は1番、3番、4番、6番、16番の5つ、「重要な課題がある」は2番、7番、8番、10番、11番、17番の6つ、「深刻な課題がある」は5番、12番、13番、14番、15番の5つという結果でした。加えて、昨年のランキングから状況が改善したと評価されたのは、SDGs1番の一つだけでしたし、SDGs2番は後退していると評価されました。
このような厳しい状況を好転させるために、2つの重要な指摘がなされています。一つは、投資の重要性です。例えば、この報告書では、土地利用と食料に関連するゴールやターゲットについては、早急な改善が必要だとしています。農業などの食料生産の過程で排出される温暖化ガスを劇的に減らしていくための技術開発などに積極的に資金を集め、地球にやさしい食料生産ができるようにしていかなければなりません。もう一つは、世界的な協力の必要性です。SDGs17番にも示されているように、このままの状況が続けば国際的な格差が拡大していくでしょう。技術や資金、人材などを結集し、世界が一体となってSDGs達成に向けて行動していく必要があります。SDGsの期限である2030年まで残された時間は長くはありません。一人ひとりの努力だけではなく、資本主義や民主主義といった社会システムのアップデートが求められているのです。
【問いかけ例】
Q.ヨーロッパ諸国から参考にできる取り組みはどんなものがあるだろうか?
* フランスでは食品の量り売りや食品ロス削減の取り組み、デンマークではエネルギーの自給自足の取り組み、北欧諸国での政治的なジェンダー公平性、などさまざまな先駆的な取り組みを見ることができる。文化的背景に留意しつつも、どのようにすればわが国で取り入れることができるかについて考えてみたい。
Q達成度が低いと評価されたゴールをどうすればいいか?
* 最近わが国でも活動が活性化していると言われているゴールであっても、世界的な評価基準からすると厳しい評価となっている。世界的な基準から見て各ゴールの課題を確認することは重要であるが、国内には関連した優れた取り組みは数多く存在している。それらをしっかりと評価し周知していくことも重要であろう。
QSDGs9番(産業と技術革新の基盤をつくろう)はなぜ高評価だったのだろうか?
* 評価には、インターネットの普及率や物流のパフォーマンス、GDPに占める研究開発費などの指標が設定されている。設定されている指標に関するデータは高い評価を獲得するには十分なパフォーマンスとなっているものの、これが産業や研究開発のすべての評価ではないことに留意する必要がある。そのうえで、今後SDGsの達成に向けて何が必要なのかを考えていきたい。
オリジナル資料
〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。