目標14と関連づけて考えよう!

● マイクロプラスチック 年5万個摂取か(2021年4月4日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● マイクロプラスチック 年5万個摂取か

 

 プラスチックごみなどが壊れてできる5ミリ以下の微小なマイクロプラスチックが世界各地の魚介類に含まれていたとの調査結果を、英ハル大学などのチームがまとめた。貝類などの軟体動物のほか、エビなどの甲殻類や魚類が体内に取り込み、残留した微小プラの量や地域差を調べた。微小プラを確認したとの報告は貝類が最も多く、濃度が最も高かった中国のサルボウガイでは1グラム当たり10.5個見つかった。甲殻類では最大8.6個、魚では同2.9個だった。調査によると、人間は食事を通じて一人当たり年間5万個を超える微小プラを摂取しているおそれがあり、シーフードを好んで食べる日本の摂取量は世界平均よりも多く最大13万個に及ぶと推定された。専門家は、未解明である人の健康への影響を評価するべきだと指摘している。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2021年4月4日の記事より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 ペットボトルやビニール袋、投棄された漁具などのプラスチックが「海洋ゴミ」となって私たちの豊かな海を汚している。WWFジャパン(〈公財〉世界自然保護基金ジャパン)によると、年間800万トンともいわれる海洋ゴミが発生し、生態系に負の影響を及ぼしている。特にマイクロプラスチックの問題は深刻である。一般的にマイクロプラスチックとは、プラスチックが陸上での風化や水流などの影響で粉砕され、大きさが5㎜以下になったものを指す。マイクロプラスチックは、食物連鎖によりその頂点である人間の体内にも蓄積されているという研究があり、私たちは1週間に5グラムほどのマイクロプラスチックを摂取しているとされ、人体への悪影響が懸念される(*1)

 

 SDGsターゲット14.1には海洋ゴミの低減が含まれているが、この問題への対策として、プラスチックの生産・使用量を大幅に削減することが重要である。食品の量り売りや容器をリユースするようなビジネスも始まっている。次に、完全リサイクルを可能にする技術開発も急がれる。加えて、海洋や土壌で分解する生分解性プラスチックの開発も行われている。プラスチックは生活に欠かせないものの、その生産・使用について革新が求められている。

 

 また、ターゲット14.2では、海の生態系の回復が掲げられている。乱獲や環境悪化を防ぎ、持続可能な海洋環境を構築することも我々の使命である。

 

 *1…マイクロプラスチックの人体蓄積の量
https://yourplasticdiet.org/wp-content/uploads/2019/06/PLASTIC-IGESTION-WEB-SPRDS.pdf

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 SDGs14番は「海の豊かさを守ろう」です。この目標が示される理由は大きく二つあります。一つは、プラスチックなどの「海洋ゴミ」が海を汚していること、もう一つは、魚や貝類など水産物の乱獲による海の生態系の破壊です。

 

 海洋ゴミの問題はとても深刻な状態です。WWFジャパン(〈公財〉世界自然保護基金ジャパン)によると、年間800万tもの海洋ゴミが発生しています。その多くはプラスチックであり、ペットボトルやプラスチック容器、そして漁網やブイなどの漁具も含まれています。どれも私たちの生活に欠かせないものです。皆さんの中には、プラスチックストローが鼻に刺さったウミガメや、大量のビニール袋を飲み込んだクジラなどの映像を見た人も多いかもしれません。この海の生き物に対する「見える」悪影響もさることながら、「見えない」重要な問題があります。それはマイクロプラスチックが海の生き物だけでなく、私たち人間にも被害を及ぼしていることです。マイクロプラスチックとは、プラスチックが海流などで細かく砕かれ大きさが5㎜以下になったものを言います。これをエビや貝類、小魚が食べ、それらを比較的大きな魚が食べ、というように食物連鎖の中でやがて私たち人間の体内に入ることになるのです。前述したWWFのHPによると、人間は1週間に5グラムほどのマイクロプラスチック、つまり、クレジットカード1枚分を食べているというショッキングな結果もあります。近い将来には、人間は海産物を食べることができなくなるかもしれません。

 

 それでは、このような問題にどう対処すればよいでしょうか。まずは、私たちの生活において、プラスチックの生産・使用を大幅に減らさなければなりません。また、海で分解できる素材の開発や、リサイクルの徹底も重要になってくるでしょう。これらの取り組みは先進国のみならず、これからプラスチックの使用量が増えると考えられる途上国も含めて、世界中で取り組んでいく必要があります。

 

 もう一つの重要な問題である乱獲による生態系の破壊も深刻です。世界の水産物の漁獲量は、この半世紀の間に飛躍的に増加しました(*1)。20世紀半ばから現在までに約3倍に増加し、その量は1億トンに迫っており、多くの海洋生物が枯渇の危機に瀕しています。このような状態を改善し、持続可能な水産業を推進するためには、漁獲量を適切に管理することはもちろんのこと、加工や消費などのプロセスにおける水産物の食品ロスをなくし、適切な量を消費するように私たちの考え方や行動も変えなければならないのです。

 

 *1…持続可能な漁業の推進
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3554.html

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.海洋ゴミを減らす具体的な取り組みはどんなものがあるだろうか?

* 海岸清掃やプラスチックストローやビニール袋を使わないようにするといった個人的に取り組めることから、包装容器のリサイクルや食料品の量り売りといった社会的な仕組みの改善・構築、海や土壌で分解するプラスチックの開発や海洋ゴミを効率的に回収する技術の開発まで、いくつかの方向性から多面的に考えてほしい。

 

Q.わが国のプラスチックの廃棄とリサイクルの現状はどうなっているだろうか?

* 廃棄されたプラスチックのうち、容器包装が約39.1%、ペットボトルは約6.2%を占める(*1)。また、回収後の利用状況を見ると、素材としてリサイクルされるものは1/4に過ぎず、多くは焼却の際の熱回収となっており、温室効果ガス排出を招いている。ヨーロッパを中心に進むサーキュラーエコノミーを参考にしながら、素材としてのリサイクルをはじめ、リデュース、リユースの重要性に気づいてほしい。

 

 *1…プラスチックのリサイクル率
http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-2x.pdf

 

Q.水産物を適切に消費するにはどのような取り組みが考えられるだろうか?

* 限られた水産物を持続可能な状態を保ちつつ消費していくためにさまざまな取り組みが求められている。魚介類を加工する際や売れ残りにより発生する食品ロスをなくしていくことや、MSCなどの水産エコラベル(*2)の認証を受けた魚介類を選択的に購入するなど、事業者のみならず私たち個人が消費者として取り組まなければならない。

 

 *2…水産エコラベル
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/budget/attach/pdf/suishin-22.pdf

 

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。