目標11と関連づけて考えよう!

● 東日本大震災から10年(2021年3月11日の記事より)

 

 

今月のニュース記事

 

● 東日本大震災から10年

 

 死者・行方不明者、関連死を含め2万2,192人が犠牲になった東日本大震災から10年を迎えた。警察庁などによると、避難者は、ピーク時の約47万人から減ったが、今なお4万1,241人に上り、福島県では帰還困難区域の大半で解除の見通しが立たない。国は今年度末までを第1期の「復興・創生期間」と定め、宅地の高台移転や災害公営住宅の整備、復興道路の整備といったインフラなどの復旧を進めてきた。復興庁の設置期限は2030年度まで延長され、25年度までを第2期と位置づけ、心のケアや産業の再生に取り組む。被災地は、インフラ整備が終わった後、持続可能な地域社会をどうつくるのかという課題と向き合いつつある。

 

(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2021年3月11日の記事より)

 

 

 

指導のポイント

 

 「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。

 

 2011年に発生した東日本大震災から10年が経過した。いまだ多くの方が避難生活を余儀なくされており、被害を受けられた方々の悲しみは、時間が経過しても決して消えることがない。また、被災地各地の人口減少は深刻であり、人々の生活環境をどう確保していくのかは喫緊の課題である。その際に、災害に強く持続可能な地域をどのように創り上げていくのかは、東北地方のみならず全国的に大きなテーマとなっている。

 

 SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」のターゲット11.bでは、災害に対する強靭さ(レジリエンス)を備えた都市や居住地を増やしていくことが示されている。その中で、基準となっているのが「仙台防災枠組2015-2030」である。これは、2015年に仙台市で開催された、「第3回国連防災世界会議」において採択され、自然災害のみならず人為的災害等に、どのように備えるのか、また対応するのかについてその枠組が示されている。

 

 もちろん、災害はわが国だけで発生しているものではない。世界には洪水や地震発生のリスクと隣り合わせで生活している国や地域も存在する。この世界共通の課題に対して、日本の教訓が活かされていることは、この分野におけるわが国のリーダーシップが求められていると言えるだろう。

 


 

 

 

学習者用解説

 

 「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。

 

 地球上の人口は増加の一途をたどっています。1950年に25億人だった世界人口は、1986年に50億人を突破、2011年に70億人を超え、現在は77億人に達しています。国連の「世界人口推計」を見ると、2050年に97億人、2100年頃には109億人に達すると推計されています(*1)。その中でも都市人口の増加が顕著です。1950年には30%に過ぎなかった都市部の人口が2018年には55%に達していて、今後さらに都市への人口集中は進むと予測されています。地方から都市への人口流入は、スラムの形成につながります。アジアやアフリカ、中南米等の大都市では、貧しい人々がスラムを形成していることも少なくありません。スラム街は犯罪や伝染病などの温床になるだけでなく、劣悪な住環境は崩壊等のリスクをはらんでいます。

 

 また、世界中を見渡してみると公害に直面している地域も少なくありません。鉱山から有害な排水が地域の地下水を汚染させることや、工場からの煤煙が地域住人の環境被害に及んでいることもあります。わが国でも西日本を中心にPM2.5や光化学スモッグの発生によって、多くの人たちが日常生活に支障をきたしています。

 

 一方、人間の生活は常に自然災害のリスクにさらされています。台風、洪水、高温、低温などさまざまな自然災害と対峙してきた人類ですが、特に世界各国で頻発する地震は、その被害は甚大です。わが国では、太古の昔から地震やそれが原因の津波が幾度となく国土を襲っています。記憶に新しい2011年の東日本大震災では、東北地方を震度7の地震と高さ十数メートルとも言われる津波により、多くの方がお亡くなりになりました。もちろん、わが国にとどまらず、毎年のように世界各地の大地震のニュースを聞くようになりました。

 

 このように、私たち人類の生活を公害や災害から守る取り組みが必要不可欠となっています。SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」は「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」です。ターゲット11.1ではスラムの改善が盛り込まれ、11.5では、災害に対して脆弱な立場におかれている人々を減らす目標が掲げられています。注目して欲しいのは、11.bで災害からのレジリエンスを高める都市計画を推進するために、「仙台防災枠組」がその基準となっていることです。これは、2015年に仙台市で実施された「第3回国連防災世界会議」において決定された国際的な防災枠組です。災害に対するリスクの理解や防災活動への市民の参加などが示されています。

 

 このように、公害などの都市型災害や地震などの自然災害から私たちの生活を守り、活を安全で暮らしやすいものにしなければならないのです。

 

*1…出典:国連人口推計
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/

 

 

 

【問いかけ例】

 

Q.なぜ都市に人口が集中するのか?

* 働く場を提供する企業や高等教育機関など、経済的、社会的なインフラが集中している都市への地方からの人口流入は、わが国のみならず世界的に見られる現象である。この現象がもたらす都市部、および人口が流出する地方におけるデメリット、および双方を解決するにはどのような手段が必要なのかを考えてほしい。

 

Q.スラムを解消するにはどうしたらよいか?

* 都市部では充実した生活環境下で暮らせる人々と、生活インフラさえ整わない厳しい環境での生活を強いられる人との間で格差が生じている。どのような人々がスラムでの生活を余儀なくされているのだろうか。また、そのような現状を改善するにはどうすればよいだろうか。

 

Q.地震に強いまちづくりとはどんなものか?

* 自然はいつも人間の想定を超えると言われている中で、どのような生活環境が私たちを地震から守ってくれるだろうか。現状の「都市」「まち」のあり方の問題点について考えてみてほしい。また、その改善策を建物や街並みといったハード面と、人々の考え方や行動などのソフト面の両面から考えてほしい。

 

 

 

オリジナル資料

 

 〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。