● 女性登用の数値 目標達成は半分以下(2020年11月21日の記事より)
今月のニュース記事
●女性登用の数値 目標達成は半分以下
内閣府が、男女共同参画政策で2015年に掲げた数値目標の達成状況を発表した。「政策・方針決定過程への女性の参画」のうち、20年現在で実績が出ている32項目はすべて、女性の割合が前回調査より上がった。今回初めて目標を達成したのは、国家公務員の中央省庁本省課長補佐・地方機関の課長や、国の審議会委員など8項目。多くの項目で過去最高となったが、目標に届いたのは半数以下の12項目にとどまった。特に、都道府県職員の登用では、本庁のポストや採用者の割合など6項目すべてが未達成だった。政府は年内に、21年度から5年間の新たな数値目標を盛り込んだ第5次男女共同参画基本計画を閣議決定する予定だという。
(第一小論net〈ニュースダイジェスト〉2020年11月21日の記事より)
指導のポイント
「今月のニュース記事」と関連のある目標について、指導の前に押さえておいていただきたいポイントを解説しています。まずは、各目標の概要やめざすところをご確認ください。
ゴール5は「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」というゴールである。「ジェンダー」とは、生物学的な性別に対して、社会的・文化的な文脈での性別の意味を含んでいる。
ジェンダー平等の実現に向けては、性別等による偏見や差別が撤廃され、すべての人の人権が守られなければならない。しかしながら、世界にはさまざまな課題が存在している。人身売買、DV(ドメスティック・バイオレンス)、児童・早期結婚、女性器切除といった慣習や基本的人権にかかわる問題から、女性の家事労働負担、行政や企業における女性の参画といった社会・経済の問題などである。
わが国においても、企業の女性管理職や女性国会議員・地方議員の少なさ、家事・育児に対する女性の過負担などがたびたび指摘されている。そのため、世界経済フォーラムが毎年発表している『Global Gender Gap Report』では、2019年における調査153か国中121位と低位置に甘んじている。加えて、LGBTQといわれる性的マイノリティへの配慮なども含めてさまざまな問題が顕在化している。
人々の偏見をなくし、伝統的悪習を克服し、社会的な公正を実現し、ジェンダーにかかわらずすべての人が公平に暮らせる世界を実現していかなければならない。
学習者用解説
「今月のニュース記事」を学習者用にかみ砕いて解説しています。
SDGs5番「ジェンダー平等を実現しよう」では差別のない社会の構築をめざしています。 しかし、わが国ではジェンダー平等社会が進んでいると言い難い状況です。世界経済フォーラム(World Economic Forum)は2006年から「Global Gender Gap Report 2020」を発表しています。わが国はグローバルランキングで121位と低位にとどまっています。このランキングは、「教育」「健康」「政治」「経済」の4つの分野での男女差を数値化しています。わが国は特に「経済」の分野では0.598(1=差がない)と男女差が目立ち、「政治」の分野においては0.049と最低水準となっています。
経済の分野においては、「M字カーブ」の問題が大きいと言えます。女性の年齢階級別の労働力率を示したグラフでは、30~39歳レンジの女性の労働力率が低くなります。まさに、出産を機に労働市場から一時「退室」をしなければならないほど、女性にとっては継続して働きにくい環境になっていることがうかがえます。
「政治」の分野では、わが国では女性の政治家が非常に少ない状況があります。諸外国に目を向けてみると、ドイツ、ニュージーランド、フィンランド等は女性トップがリーダーシップを発揮していますし、フランスやスペインでは閣僚のうちの約半数が女性です。その他の分野でも女性比率が少なくなっていることも多く、わが国の「ジェンダーギャップ」を小さくしていくための更なる積極的な取り組みが求められます。
また、児童婚姻や人身売買などの問題の解消もSDGs5番のターゲットとなっています。途上国や紛争地域では、「口減らし」や労働力確保のために未成年のうちから嫁がされたり、売られたりしていく子どもが後を絶ちません。これらの状況は、決してその国・地域に限定された問題ではなく、私たちの生活につながっていることもあるのです。世界が協力して取り組むべき問題だと言えるでしょう。
SDGs5番はLGBTにも言及しています。L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)のことを指します。しかしこれにとどまらず、Q(クエスチョニング)やI(インターセックス)など、数多くの性的志向が存在すると言われています。性的マイノリティは人口の10%を占めるという統計もありますが、社会的認知が進んでいるとは言い難い状況ではないでしょうか。学校や会社で「生きづらさ」を感じている人も多いのです。この問題も、社会が一体となって認知・改善を進めていくことが重要でしょう。
【問いかけ例】
Q.日本ではなぜ女性の政治家が少ないのだろうか?
* さまざまな特徴や趣向を持った人々が生活するこの社会で、その政治に携わる人は圧倒的に男性が多いということについて、どのようなデメリットがあるのかを考えてほしい。
Q.どのような仕組みや制度があれば、安心して出産・子育てをし、仕事もできるのだろうか?
* わが国では男性の育休取得率が低い現状があり、なぜそのような社会環境なのか、どうすれば解決するのか等について考えてほしい。また、少子化がなぜ進行するのかについて、この問いをきっかけとしてそのさまざまな原因にも迫ってほしい。
Q.性的マイノリティを意識した政策や制度はどんなものがあるだろうか?
* ダイバーシティ社会を推進する必要性について、人権擁護としての側面と、多様性によるメリット享受の両面から考えてほしい。
オリジナル資料
〈資料1〉は、「学習者用解説」と、「生徒への問いかけ例」をまとめたプリントです(A4×2枚)。〈資料2〉は、その月に取り上げるゴールに関連する「入試小論文過去問題」を紹介します。